「おい! 大丈夫か?」

 ソファから落ちた僕に反射的に隆が手を伸ばした。

「大丈夫…保冷剤取ろうと思って…」
「うう…見てらんねーな」
「小島君、我慢だ、ここは」
「お前に言われたくねぇ」

 ズボンのベルトを外し、保冷剤をつかんだ。そのままトランクスの中に直接突っ込んだ。ヒヤッとした感触にちょっとびっくりしたが、すぐに気持ちよくなった。すると頭の中のノイズがだんだんボリュームを落としていった。そんなすぐに効果があるなんて思わなかったので、僕は隆を向いて思わず報告した。

「これ…効くかも…」
「マジか、もっと入れろよ」
「ええ」

 言われたように、1個づつ下腹部に入れて当てる。性感がうっすらと遠のいていく感じがした。

「なんか…落ち着く…」
「ほんとに? イケてる?」

 訊かれた寺岡さんに、うん、とうなづいた。寺岡さんは目を細めて、僕を横目で見ると、急に無表情になった。

「じゃ、もう一度いこうか」
「え…なにをですか?」
「決まってるでしょ。小島君、こっち見ないで」

 彼はそう言ったかと思うと、テーブルの上で節電モードでブラックアウトしていたタブレットを僕の前に滑らせた。