震える指で瓶の蓋をやっとの思いで開けた。瓶を落としそうになるほど、指がわななく。それを見た寺岡さんが、僕の指に手を這わせて、しっかり握らせてくれた。その手が堪えようもないほど感じて、僕はうっ…と呻きながら仰け反った。

「寺岡! お前、離れろ!」

 それを見た隆が怒鳴った。

「バカ言ってないでよ! 瓶、落としちゃうでしょ! これはセーフだって!」
「隆…大丈夫…ホントに…力…入んな…い…」
「お前の手つきがエロすぎんだよ!」
「裕君、離すよ?」
「は…い」

 やっとの思いで指にオイルを取る。さらっとした透明な液体が指を伝った。そのまま僕は鼻の奥まで指を突っ込んだ。右、左と、両方に奥までオイルが塗りこまれた。匂いは曖昧だったが、鼻の奥がツーンとして、眉間に痛みを感じた。その時、急に頭の中がスーッと冷えていくのがわかった。寒い冬の朝に息を急に吸った時のようだった。あの時も痛かったっけ…歯磨き粉の時も。

 下腹部の疼きは変わらなかったが、全身のパニックみたいな焦燥感が薄れ始め、指先の震えが治まってきた。寺岡さんがソファに寄りかかってため息をついた。

「小島君…だってこれ…とてつもなくエロいじゃん。なんだよこれ…反則だよ」
「俺だって我慢してんだぞ…」
「ごっ…ごめんなさい…」
「いやいや、君のせいじゃないから。君のせいだけど」

 それから…なにすればいいんだっけ? と、僕は疼く下腹部の感覚に耐えながら、少しだけ冷えた頭で考えていた。

 保冷剤。そうだった。熱を直接冷やしてみるんだった。僕はテーブルの上にミントの瓶を置くと、その先の保冷剤に手を伸ばした。ソファから身体が滑り落ちて、そのまま僕は床に座り込んでいた。