暑い。暑すぎる。

私、高校2年生 松崎莉茉(マツザキ リマ)は
額から流れ出る汗を拭きながら
ハゲ校長の長い長い話をきいていた。

今日は1学期の終業式。
こんな外はカンカン照りな真夏の気温と
全校生徒が密集した体育館で話を聞くなんんぞ
なんの拷問だよ…
とにかく私は暑さに耐え続けた。

終業式も無事終わり、ショートホームルームを
終えたあと、親友の仙石 鈴里(センゴク スズリ)と
帰り道を歩いていた。

鈴里とは小学生からの付き合いで、とても
かわいい親友。
ダークブラウンのすこしウェーブした髪の毛に
真夏なのに日焼けもしていない真っ白な肌がとてもよく映えている。
鈴里は俗に言う美少女だ。うん、とにかくモテる。
あたしみたいな平凡女子高生が隣で歩くのは結構勇気がいるものだ。
まぁ、そんな話はさておき、あたしは鈴里とつい最近できたアイス屋に行こうという
話になった。

「莉茉!莉茉!すっごいおいしそぉ!」
大きな目をキラキラと光らせ鈴里は
アイスを選んでいる。

「鈴里~、まだ決まらないのー?」
暑さで自分が溶けそうなあたしは
うーん…と悩む鈴里を急かす。

「ん~まって~」
さすがマイペース。あたしの急かしには
まったく動じない。

悩んだ末、鈴里はストロベリーチョコチップ
あたしはアップルシャーベットのアイスにした。

店内はカフェみたいになっており、テラスもあったので、
テラスで食べようと2人で決めた。

「莉茉、ひとくち ちょうだーい」
小動物のようにひょこひょこしている
鈴里はアイスをねだる。くそ、かわいすぎる。

「もー、しかたないなぁー」
あたしはかわいさ満点の鈴里の押しに負けて
アイスをひとくちわけた。
「ん~!おいひぃ」
たまらんような笑顔で鈴里は言う。

しばらくアイスを食べながらテラスで話していた。
そのとき、

「おっ?莉茉と鈴里じゃーん!」

げっ!!この声は…

そこに現れたのは同じクラスの、東堂 慶(トウドウ ケイ)だ。2、3人友達もいる。

あたしがいっっちばん嫌いな奴。

「相変わらず美少女と平凡少女は仲いいのなー」

嫌味ったらしくニヤニヤとあたしに言う東堂 慶。
ムッカつく。

「はいはい、平凡で悪かったですねー」

ムスッとしながら話を流す。
こーいうときは流したが早い。


「お、アイスじゃーん、ひとくち!」

なんて図々しい。
あんたになんてやりたくないしー!

「はぁ!?食べたいなら自分で買ってよね」

「ケチやなー、ほんと」

むぅ、と頬を膨らます東堂 慶。
こいつ、ふつーにしてればカッコイイのに
って、時々思ってしまうあたしが
どことなく存在する。

「うるっさいなぁー!いちいちつっかかってこないでー!」

あたしは逃げるように鈴里とテラスを出た。


「ね、莉茉~」

近くの公園のブランコに座りながら
鈴里が話しかけてきた。

「ん、なーにー?」

あたしは気だるそうに答える。

「私ね、東堂くんて、莉茉のこと好きだと思うんだよね」

クスッと微笑みながら楽しそうに話す鈴里。

「は、はぁ!? ないから!ぜっったいないから!」

「ふふ、莉茉 顔赤いよ~?」
ふにゃっと微笑む鈴里。
どうやらあたしのことを楽しんでる様子だ。

「あ、赤くなってないし!ふつうだし!」

焦るあたしに鈴里はぷっ、と吹き出す。

「っていうか!鈴里はどーなのよ
好きな人とか、いないわけ?」

必死に話を違う方向にもっていく。

「あー…うん、いるよ~」

「えっ!だれだれ!?」

興味本位で聞きに入るあたし。

「ふへへ、まだ秘密だよ~」

人差し指を口の前に当て、小さく微笑む。

「えー!なにそれー!」

あたしもふははっと笑う。

こーゆーの、なんかいいな。と思った。


こういう日が毎日続けばいいのに。
このときあたしはこの夏休みにおこる
出来事を想像してすらいなかった。