「さくら、もう行ける?」
「うん!」
「もう行かれるんですか?」
「はい。早く学校に行ってテスト勉強したいので。」
「そうですか。熱心ですね。」
「いえ、バカなだけなんですよ……」
メイドさんは「そんなことないですよ」と言って、また微笑んだ。
私はさくらを保育園に送り届け、
別れ際、朝ごはんの袋詰めパンをさくらに渡した。
「おねーちゃん、これ何?」
「さくら食べていいよ。」
「おねーちゃんの朝ごはん?」
「そうだけど、お腹いっぱいなの。」
「ふ~ん……」
さくらは不思議そうに私の表情を覗き込んだけど、
「ありがと」と言ってパンを口に含んだ。
「じゃ、また後でね。」
「いってらっしゃい!」
いつも通り、私はもと来た道を引き返した。