俯いて、私は顔をぐちゃぐちゃに歪めた。
さようならなんて冷たい言葉言いたくなかったのに、使い物にならない私の唇は口走った。
それよりも言いたい言葉があるはずなのに、もうなにも出てこない。
息が苦しい、目が熱い。
泣き声が零れそうな唇を噛んで、私はもつれそうな足で慌てて後ずさる。
けれど、そんな危うい私の足を声が止めたんだ……。
「凛ちゃん」
私は声をついに漏らし、目尻から涙をあふれさせた。
声が漏れてしまう口を無理矢理手の甲でおさえつけながら、私は押し上げた瞼を震わせた。
その場に崩れてしまいそうに、膝も震えだす。
だって、私の目の前に、落ちくぼんだ目を真っ赤に染めて、地面に涙を落とすセツ婆がいたから。
呆然と立ち尽くす私を、おいおいと泣くセツ婆が抱きしめた。
小さく縮んだ体全部で、私を包む。