「お礼を言うのはこちらの方じゃ。凛様がいてくださらなかったら、この村は烏天狗に焼かれていた。本当にありがとうございました」

そう言って頭をあげ、しわしわの顔で微笑む長老を見て、私の声はつまった。

そんな風に言われることが恥ずかしい。

私の力なんてほんの小さなもの。

今笑えているのは、この村の人たちの力があったからこそなのに、道のわきに並ぶみんなまでもが頭を下げる。

だから、胸が苦しくなる。

こんな小娘にそんなことをしなくていいんだ。

そんな風にお礼を言ってくれなくていいんだ。

やっと埋まりだした心の距離が、開いてしまう気がして怖いから。

本当にこれを最後に、わかたれてしまう気がするから。

でも、うまく言葉にならなくて、こみ上げるものを無理やり飲み込んだ。

そしてきりきりと痛む胸を抱え、私は数歩下がって最後のあいさつをする。

「では、皆さんどうかお元気で……さようなら……」