あんなにも恐ろしかった戦を私たちは乗り越えた。
そのためにここへ来た私の役目は、同時に終わったのだ。
強張っていた手が、名残惜しげにスカートをはなす。
でも唇だけは勝手に動いた。
「紫希は……ねえ、紫希はこれからどうするの……?」
心は彼にすがりつきたがるけれど、彼は既にしっかりと遠くを見据えていた。
「俺は、この村の担い手にならなくてはならない。ようやく平和な暮らしが戻りそうだからな」
私は不甲斐無く肩を落とす。
やはり彼は大人だ。
もう、この村の未来のことを考えている。
今までそれが叶わなかったのだから、当たり前なのか……。
立派だと思うのに、心にはさみしく風が吹きすさぶ。
そんな私を見かねたのか紫希は、微かに眉間へ皺をよせ、ぎこちなく微笑んだ。
「凛には、人間界にも大切な人がたくさんいるだろう」