少年のように小さく見える。

するとそんな彼の頭上に、さっきまで姿の見えなかった響が悠長に浮遊して滑り飛んでくる。

彼は頭の後ろで手を組んで欠伸をひとつすると、微笑を浮かべて琴弥を見下ろした。

「兄貴の考えがさ、古くせぇんだよ。クソじじいの時代はとっくに終わったんだ。いい加減、囚われるのはやめたらどうだ?」

相変わらず、どうでもよさそうに浮ついた声を出す。

けれど目は真剣に琴弥だけを輝く瞳に映している。

私は思った、彼は素直になれないのだと。

今まで一度も、ふたりを兄弟らしいと思ったことはなかった。

けれど、今ならちょっぴり見えてくる。

一生懸命大人ぶった顔しながら、本当はお兄ちゃんに自分を見てもらいたい弟に。

けれど、視線は交わらず宙をさまよう。

琴弥は彼を見ようとせず、顔を背ける。

だから、響は諦め空を見上げて、一生懸命にぴんと張った声を紡ぎだす。