そうして、この上なくやわらかく甘い声を、大好きな人の唇が紡いでくれるの。
「凛が成し遂げたんだ。すごいよ、お前は。強かったよ、凛は」
涙が溢れすぎて彼の顔がぼやけてしまう。
胸が熱い。
みんなの命が助かった。
お母さんが命がけで守ろうとしていた村を守りきれた。
本当にできたんだ。
そう思ったら、涙がボロボロと流れて止まらない。
紫希は私とおでこをくっつけて、微笑んでくれる。
よかった。
今、みんなと生きていることを、とても幸せに思う。
私は唇を結んで、幸せを噛み締めた。
そんな中、微かに大地を打つ下駄の掠れた音がした。
私はそっと紫希から額をはなし、ゆっくりとその音がした方向を向いた。
「どこへ……行くの? 私たちのことはもういいの……」