本当はみんなが、心から欲しているそんなあたたかいものがたくさんある場所。

あの村の心までは、誰にもキズつけさせるものか。

私は瞳を輝かせる。

けれど、九条琴弥は吐き捨てるように太く息をついた。

「これだから甘い。では聞く。人間界というのは、力のある者、博識のある者、富のある者、そういう者が上へ立つようにできているのではなかったか?」

彼は表情こそ崩さないけれど、小さい頃の冷めきった話し方はどこへやら、脅すように語気が強まる。

必死に反論しようと彼は牙をむく。

でも私はそんなものは認めない。

私は鋭い視線を弱めない。

「それだけじゃない! 愛があ……」

「そんな反論は弱い者の言い訳にすぎない! 絵空事だ! どの世界にも強者が君臨するのだ!」

「んっ!!」

見開いた瞳いっぱいに彼のグラグラと不安定に揺れる瞳がいっぱいに映しだされる。