電車に揺られること約20分。

駅から目的地まで徒歩約15分。

「…久しぶり、高野」

ココに来るのも10年ぶりだ。

あぁ、もう“アノ日”から10年経ったのか。

そっと持ってきた花を置き、線香に火をつける。

手を合わせ、目の前の現実と向かい合う。

「やっと、受け入れられたよ。お前の死」

返事なんてないけど、俺は高野の墓に向かって話し続ける。涙が滲んで来たのは、きっと気のせいだ。

「10年もかかったよ、受け入れるのにさ。

…今からやっと前に進めそうだよ。新しい恋もしなくちゃ、だよな。俺も23だ。とっとと彼女作って結婚した方がいいよなぁ…

俺、教師になりたいんだ。高野みたいな子を救いたくて。頑張るから応援してくれよな。

でも俺、中1の夏の事だけはどうしても忘れられないよ。

…お前と過ごした日々は幻なんかじゃないよな。

だから、ちゃんと前に進むよ。

また、会って前みたいに笑える日まで…頑張るよ、ありがとな、高野

…ハハッ、アノ日は泣けなかったのに今さらになって泣けてきたよ」

ゴシゴシと目をこする。

『いーんじゃない、たまには泣いたってさ』

ゴォッと風の音に紛れて聞こえた声。この声は紛れもなく高野の声。

バッと顔を上げてもあるのは高野の墓。

「…高野。あの時直接言えなくてゴメン。

高野が好きだ。今でも。高野の笑った顔、キツイことばっか言う癖にホントは優しくて。強がりの嘘吐きの不安症なお前が今でも大好きだ。けど前向くから。ちゃんと新しい恋するから。

…今、お前が笑ってくれてるならいい。

天国とかそういうとこで幸せならいい。

俺はお前が幸せならいいんだ。

本当に幸せなら、夢で会いに来いよな…‼︎」

涙を拭いて、立ち上がる。

空を仰ぎ見てから、高野の墓へと目線を移す。

「次に来る時は彼女が出来た時な。

凄い可愛い彼女作って紹介してやるよ」

じゃぁな

呟いて、背を向け歩き出す。

『楽しみにしてるから』

そんな高野の声が聞こえて、また涙が零れる。

さっきお前が言ってたから

今くらい、泣いてもいいよな…?

「大丈夫、ですか?」

…彼女と出逢えたのは高野のおかげかも知れないな。

この出逢いが運命だと知るのはまた、別のお話