アスラが驚くのも当然のこと。
昨夜、黒馬になったイフリートに乗って王宮へ帰ってから、
イフリートは「ではな」とだけ言って、再び夜空へ飛び立ったのだ。
てっきりもう戻ってこないとアスラは思っていたのに。
「主人のものへ戻ってきたのがそんなにいけないか」
不機嫌そうに、イフリートは言う。
「主人って……あたしはあんたの主人になった覚えはないぞ」
「そうか。哀れな脳みそだな。鳥以下だ」
あまりの物言いに、アスラは言葉を失った。
一応は姫であるアスラは、陰口や遠回しな蔑みの言葉は受けたことがあるが、
面と向かって「鳥以下の脳みそ」などと言われたことはなかったのだ。