アスラがその様を不思議そうに見ていると、しばらくして意を決したように口を開いた。


「あの……高いところから飛び降りたり、逆に高いところに登ったりはしてない、ですよね?」


「……は?」


質問の意図を理解しかねて、アスラは首をかしげる。


すると、ルトは「いやあの、答えなくていいんですけど……っ!」と、慌てたように手をバタバタさせる。


「ただ、……あんまり危ないことはしないでくださいね?」


ルトはそう言うやいなや、それでは、と慌てて部屋を出て行く。

ルトの去った扉を見つめながら、今のは何事かと考えていたアスラだが。


「……あ」


ふと気がついて、アスラは声を上げた。


――ルトが言っていたのはおそらく、アスラが城を抜け出し、また戻ってきた手段について、だ。


「王宮の外壁なんか登れるわけないだろ……」


呆れたように言って、しかしアスラは優しく笑っていた。