「待ちなさい」


厳しい声に呼びとめられた。


足音はしなかったはず――。驚いて振り返って、アスラは目を見張る。


一瞬だけ、アスラはそれを月だと思った。暗い夜の街に、浮かぶ月が二つ。


――金の髪。


アスラを呼びとめたのは、金の髪の若い男だった。

アスラより頭一つは背が高く、雪のように白い肌をもつ、整った顔立ちの男だ。


その傍らには、男と同じように金の髪に白い肌の、小さな少女がいた。

こちらも現実のものと思えぬほど整った顔をしており、二人の並ぶ様はひどく幻想的だった。