アスラはそっと、木の天井に耳をつけて外の様子をうかがった。

その場にもし人がいるなら、先ほどアスラが天井に頭をぶつけた音に反応して近づいてきてもおかしくないが――何の音もしない。



口元をぎゅっと引き結んで、アスラは天井の木の板をそっと押した。

きい、と、小さく軋む音を立てて、木の天井が持ち上がる。

ずっと真っ暗闇の中でランタンの灯りを見続けていたので、外の世界に目が慣れるのに時間がかかった。

ようやく慣れてきた目をこらしてよく見ると、アスラが出たのはどこかの家の一室のようだった。

――民家の一室にしては、何もない殺風景な部屋だが。


窓から差し込む満月の灯りで、室内はランタンの灯りもいらないほど明るい。

アスラは外の様子を見に、窓辺に歩み寄った。