side 梓

なんだかいい夢を見た。

いや、いい夢⁇

と言うか、懐かしい夢。

そしてなんか…落ち着く匂い…。

あれ…揺れて、る⁇

「…きゃぁぁぁぁぁーっ」

こっ、これ、え⁇

「ったく、やっと目、覚めたか」
「なっ、なんでぇ‼︎⁇」

なんで私が…京君におんぶされてるのーぉぉぉーっ‼︎

「いくら起こしても起きなかった奴は誰だよ」
「へっ‼︎⁇」
「しかも。俺の机でどーどうと寝てたのは誰だよ」
「がっ…‼︎わ、わわわ私…」

しまった‼︎

そう言えば私っ…‼︎

「爆睡してたな。おまけに寝言まで言ってたぜ⁇」
「えっ‼︎嘘‼︎」
「嘘」
「へ⁇」
「寝言は嘘」
「そう…てか降ろしてよ‼︎」
「いやーもう、すぐそこね⁇」

京君は少し先の私の家を指差す。

「だけど降ろしてよー‼︎」
「なんだよそれ。そんなこと言われるなら置いて帰っとけば…」
「すみません…」
「はい」

はあ…。

なんでこんなことに…。

あ、そうだ。

元はと言えばあの子が…。

「でさ。桜となに話したの⁇」
「…桜って…」
「なに⁇普通じゃん」
「…そうだけど…桜って名前みたいじゃん」
「名前は桃な⁇」
「あっ‼︎今名前で言ったー‼︎」
「名前くらいなんだよ」
「…」

だってさー。

「ん⁇まさかヤキモチですか⁇」

と、京君がニヤニヤしながら言う。

「はぁっ‼︎⁇」
「ん⁇」

…。

なんなのよ、もう…‼︎

「別に⁇そんなんじゃない。大体なんで私が桜さんにヤキモチ焼いちゃうわけ⁇
京君の事好きでもないのに」

…あ、言っちゃった…。

「ふーん⁇そんなのはなから知ってるっての。あずが俺を好きじゃないことくらい。全部冗談で言ったつもりだけど…」

…なに、それ。

もういい。

「降ろしてよ‼︎」
「は⁇今更なんだよ」
「もういい‼︎」
「ふざけんな。なに言われたんだよあの人から‼︎」
「なにも言われてなんかないよっ」
「だったら…泣いてた意味がわかんねぇ」
「…え⁇」

泣いて、た⁇

「あずが寝てる時目元赤かったから」
「…それは…」
「まぁ。あの子の言うこと、あまり気にしない方がいい」
「なんで⁇」
「なんでって、おかしいだろ。いきなり現れて。なにが目的かしんねーけど」

…。

やっぱり、京君は気づいてないんだ。

桜さんの気持ち…。

だったら私はそれ以上だね。

「…ごめんね、京君」
「あ⁇」
「ありがとう」

私はそのまま京君におぶってもらった。