「ねぇねぇ水樹さん。ちょっとお話ししようよっ」

そう、放課後教室に来たのはやっぱりあの子だった。

「あ、桜」

と、京君は言う。

「北見君。あっ、水樹さん借りてもいいかな」

と、桜さんは京君に言う。

「なに⁇話⁇」
「うん、ちょっとねっ」
「…そう」

京君はしばらく私をじーっと見た。

桜さんは教室を出ようとする。

「水樹さん」

着いて来いってことかな。

私も一歩踏み出そうとした時、京君が

「あ、俺が出るから。お前らはここで話せよ」

と、言う。

「京君どこ行くの⁇」

私は京君に言った。

「んー、俺サッカー部見て来るわ」

…サッカー部⁇

なんでまた…。

「そう。分かった」
「話し終わったら電話して」

そう言って京君は教室を出た。

…。

シーンとなる教室。

桜さんはドアの方に行って京君が行ったかどうか確認した。

「桜さ…」
「本当、仲良いんだね。水樹さんと北見君」
「…」
「少し、妬いちゃった」

え⁇

すると桜さんの目には涙がたまっていた。

「桜…さん⁇」

すると桜さんは涙を慌てて拭う。

だけど次々に出てくる涙。

「水樹さんに、妬いてた。ずっと」
「…」
「私っ、北見君が好きなのっ。だから…そんな水樹さんが邪魔だった」
「…」

そっか。

やっぱり梨花ちゃんの言う通りだったよ。

「好きなのにっ、私のことなんてちっとも見てくれなくて」
「…そんなこと、ないよ…」

だって京君は、いつも桜さんといるじゃん。

多分、学校では桜さんといる時間の方が多いよ⁇

「そんなわけないじゃん‼︎私っ‼︎…一回も北見君から名前で呼ばれたことないもん‼︎」
「え⁇」

名前…⁇

『なぁあず』

『おいあず。起きろ』

『ごめんな、あず。今日一緒に帰れない…』

『なーに見てんだよあずは』

『あずさ、最近霜月とよくいるよね』

…。

そうだ、私…。

「水樹さんが羨ましいよ‼︎なんで‼︎⁇ずるい…」
「…でも桜さん…私を応援するって…」
「あんなの嘘に決まってるじゃん」
「…」
「第一、水樹さんの気持ち、私は知らない」
「私は…」
「好きじゃなかったら…興味なかったら…こんなになるまで話さないよ…」

…。

私も、京君が好き…。

でも…。

「京君は、私のことそんな風には見てくれてないよ」
「なんでそう言えるわけ」
「京君はそう言う人だから。誰にでも優しくて。私がそれは一番知ってる。じゃないと、京君と幼なじみやってる意味ないよ」
「え…嘘…幼なじみ…⁇」
「そうだよ。私達はなにもない。ただの幼なじみ。だからね⁇気持ちを伝えたくても伝えられないんだ。だってそんな…答えくらい分かるよ…。振られちゃったらもう一緒になんていられない。そう思うと、すごく辛いんだ」
「…じゃあ私…気持ち伝えてもいいのかな」

正直嫌だ。

私に出来ないこと、桜さんは出来るんだもん。

桜さんの方がずるいよ。

「私はなにも言わないよ」
「…じゃあ。私伝えるから。…水樹さんも、辛かったんだね…」

桜さんはそう言って私に礼をし、教室を出て行った。

「はあっ…」

私、もうすぐ失恋しちゃうのかな…。

きっと桜さんが気持ちを伝えたら…

いくら京君でも…おっけいするよ…。

振る理由、京君にはないよ…。