「ん…」

あれ…ここって…。

「よっ、梓っち‼︎」
「…あっ‼︎しっ、霜月君‼︎」

ここ…ベットだし…。

「目、覚めたか。ここ、保健室な」
「あ、やっぱり…」

あ、そうだ。

「梨花ちゃんは‼︎⁇」
「あぁ、あいつなら今部活だと思うけど」
「えっ、もうそんな時間‼︎⁇」
「五時半。あいつ、部活休んで梓っちの看病するとか言ってたけどじゃあ俺が代わりにいるからって言ったら、部活行った」
「そ、かぁ」

えっ、じゃあ‼︎

「部活は‼︎⁇」
「部活⁇」
「霜月君、部活なんじゃ…」
「あぁ、今雪降ってるんだよね。ここの方があったけーし」

雪降ってるんだ‼︎

「顧問の先生なにも言わないの⁇」
「んー…たまに言われるけど、もう分かってんじゃね⁇サボりって」

そう、笑いながら言う霜月君。

「それダメじゃんか」

私も、そんな霜月君を見て笑う。

京君…帰っちゃったよね…。

今日私…一人で帰るのか…。

「梓っち⁇」
「あっ、え⁇」
「キツイ⁇めっちゃぼーっとしてたからさ」
「えっ、うんうん。大丈夫だよ⁇」

すると霜月君は私のおでこに手を当てる。

「まだ熱あるな…」
「だ、大丈夫だよ。この通り、元気だし」
「送ってやろうか」
「えっ、うんうん‼︎霜月君って、電車じゃないの⁇」
「そうだよ」
「だってほら、駅は真逆だもん」
「良いってそんなの。熱あるのに一人で帰らせる訳にはいかねーよ。しかも雪降ってるし」
「霜月君…私の心配ばっかり」

前も…。

「心配するのは当たり前じゃん。梓っちほっとけねーし」
「…」

私、そんなにだめかな…。

「てか、いつも川野と帰ってんの⁇」

川野とは、梨花ちゃんのこと。

「うんうん、いつもは京君と帰ってるよ⁇」
「北見⁇」
「うん。でもまぁ、今日はもう帰っちゃってると思うけど」
「…梓っちやるねぇ」
「え⁇」
「だってあの、北見だよ⁇競争率の激しい」
「えー⁇」

まあ確かに、競争率は激しいけど…。

「んー、と言うか梓っちって正直、北見の事好きなの⁇いつも一緒にいるよね」
「えっ、と…」

好きだけど…。

「ん⁇」
「…うん…京君は、好き…。これ、誰にも言わないでよね‼︎⁇」
「へー、そっか。うん、誰にも言わね」
「ありがとう」
「でもさ、なんだかんだ言って北見も北見で梓っちと一緒にいるじゃん⁇北見、梓っちの事好きなんじゃね⁇」
「…な訳ないじゃん‼︎」

そうだよ、そんなわけないよ。

「でも、女子が北見を遊びに誘ったり、帰り一緒に帰ろうとか、告白したってあいつは全て断るよ⁇でも実際、梓っちは一緒に帰れてんじゃん」
「それはただ…」

家が近くて…。
幼なじみで…。

「もしも北見が梓っちのこと好きじゃないとしても、特別だとは思ってんじゃねーの⁇」

特別…。

ずっと、京君の特別になりたいって思ってた…。

「そうかな」

幼なじみは、特別なのかな。

…うんうん、違う意味で。

だけどもしも京君に、幼なじみではなく本当の特別な人が現れたら、きっと私は京君の側にはいられない。

今こうやって、京君の側にいられるのは…当たり前じゃ、ないのかな。