side 梓

お別れの時間。

「今日は本当、ありがとうございました」
「いえいえー。また三人で行こうね」

京君のお姉ちゃんは昔からすごく優しかった。

そして、誰もが憧れるような美人さんだった。

「はいっ、では失礼します」

私は家に入った。

「ただいまー」
「あっ、お帰り梓。楽しかった⁇」
「うん。疲れたから今日はもう休むね」

お母さんにそう言う私。

「うん、おやすみ」

お母さんにおやすみと言って私は部屋へ行った。

今は夜の10時。

京君の家の人達はズルイよ…。

みんな、良い人ばっかりで。

私には無理…。

「はあ…」

部屋にため息の音だけが聞こえる。

「どうしたら…京君は私の気持ちに…気づいてくれるんだろ…」

いや、告白をする気はない。

今は、ね。

だけど辛いな…今のままじゃ…。

どうにか気持ちを伝えずに、気づいてもらえる方法…ないのかな。

んー…。

んー…。

んんー…。

結局、良い考えはまとまらず…。

ただ、辛いだけだった。