side 梓

ただいま京君の正面に座っています。

…机挟んで。

「美味しいね、ここ」
「…ぁ、あ」

さっきから京君の様子がおかしい。

すると

「ねーねーお兄ちゃん」

と、京君のズボンを引っ張る小さな女の子がやって来た。

小学生くらいかな。

「ん⁇」
「お兄ちゃん…王子様みたい…」
「え⁇」

京君は笑う。

「お兄ちゃん高校生⁇」
「うん、そうだよ」

京君、ちっさい子に対しては優しんだ。

「じゃあもうすぐ大人だね」
「まあ…そうだね」
「お兄ちゃんはお姉ちゃんと結婚するの⁇」

え…結婚…って。

その前に私たち、まず付き合ってすら…

「えー、どうだろ」
「子供は3人くらい欲しいね」
「ははっ、そうだね」

こ、子供って…。

「ほら佐知ー」

この子のお母さんが呼んでいる。

「あっ、ママ…」
「ごめんなさいね、ほら佐知行くわよ」
「あ、うん」

佐知ちゃんはお母さんに引っ張られる。

「お兄ちゃーん‼︎」

と、佐知ちゃんは叫ぶ。

「ほら、佐…」

お母さんも慌てて止める。

「幸せにねっ」

佐知ちゃんはそう言って私達に向かって微笑んだ。