「先生…。」



俯いたまま、――――。


表情を失くしてしまった俺に、裕木亜澄は戸惑いを隠せないでいた。



「あの…。」


「ごめん、亜澄ちゃん。」


「はい。」


「ちょっと、一緒に外、出ない?」


「えっ、でも…。」


「飛鳥から聞いたって話、詳しく聞かせてくれないか。

ここだと誰が聞いてるかわかんないし。」


「あっ、はい…。

じゃあ、急いで片付けてきます。」



ちょこんと頭を下げて。


裕木亜澄は慌てた様子で部屋から出ていった。



事故に合う前日、飛鳥は家に来ている。



ただ、その時、俺は家にいなかったんだ。


碧から聞いた話では、あまり元気がなかったらしい。


何となく気にはなってはいたけれど…。


電話をかけても、ずっと電源が切られたままで。