頬を膨らませて、僕を睨む瞳には、わざとらしい怒りが込められていて。
こういう時の対処の仕方に、最近僕は、どうも迷いが生じてる。
わざと拗ねた飛鳥を前に、笑って過ごせばいいのか。
兄貴ぶって、さらっと流せばいいのか。
奏多みたいに、本気で怒らせてしまう方がいいのか…。
どっちにしても、存在が近過ぎて。
「裕木さんに何か、言われたのか?」
「亜澄はそんなこと、何も、言わないし。
っていうか、―――。
大哉君のこと、まんざらでもなさそうだよ?」
「そんなわけないじゃん。」
「だって、葛西先生、格好いいねって、言ってたもん。」
ほら、な―――。
だから、呼びつけてんだろ?
毎回、家庭教師のバイトの帰り。
自分で確認したいんだよな、飛鳥、―――。
僕が裕木亜澄になびかないようにって、ね。