「チョコくんがいない今、私がイチゴちゃんを守るからね」


いつもは見せない、ミューのりりしい顔。
掴まれた手から、暖かさを感じた。


「俺も。 めんどくさいとか、言ってる場合じゃないな」


ジャックは鎌を大きく振りかざして、ダークの背中にピタリと当てた。


「悪魔も殺せる、死神の鎌で刺されるのはさすがに死んじゃうよね。 殺されるのは困るから、今日は引き下がる。 じゃあ、イチゴ。 またね?」


そう言って、ダークは手を振って去っていった。


みんな、ダークの姿が見えなくなるまで、ずっと睨み続けていた。


姿が見えなくなると、みんな、私を心配そうな目で見つめた。


「大丈夫だよ、心配しないで。 …ありがと」


「イチゴが悪魔嫌いになった理由は、アイツが原因か?」


私は頷く。
重たい空気を取っ払うように、顔を上げた。


「ほんとに、大丈夫! アイツの言った事は、気にしないでっ」


「イチゴちゃん…、チョコくんは、あの人とは、違うよ? 同じ悪魔だけど、チョコくんとは違う…。 私は、そう断言できるよ」


私は小さく頷いて、ミューの肩に手を置いた。


「うん、分かってる。 でも、悪魔は、嫌いなの」


嫌い、嫌い…なのに。
この場にチョコがいてくれたら良かったと、私は思ってしまった。


人間界への扉をしばらく見つめたあと、私はトマトを肩に乗せて、ホウキに乗った。