「怖がる事なんて無いはずだよ。 自分で言うのもナンだけど、俺は、イチゴの恩人なんだから」


「恩人…?」


ミューは眉をひそめてダークを見る。
ダークはミューの服を指さして、言った。


「言ってしまえば、君が今着てるゴスロリ衣装も、俺の力で着れてるようなもんだ」


「どうゆう事だ」


ジャックも、少し離れた所からそう言った。ダークはまたクスクスと笑って、私を指さした。


「イチゴが他の魔法使いよりも、魔力がすぐれてるのは、俺のおかげ」


指をさされた私は、ただ突っ立って、“あの日の事”を思い出していた。


顔は青ざめて、眼球は挙動不審に動く。
冷汗が、頭からたらりと落ちてきた。


「お前のおかげなんかじゃないよ。 お前のせいで、イチゴは苦しんでる」


トマトが、私の肩からストン、と地上に降りて、ダークの顔を睨んで言った。


「何かを得る為には、何かを失う。 当然の事だろう。 どちらにせよ、イチゴが望んだ事だ」


望んだ…事。
確かに私は望んでいた。


…でも。


「望んでいない事もあった」


私のかわりにトマトがそう言うと、ダークは笑った。