ミューは、見送りにお菓子をプレゼントしようと言ってたので、キッチンを貸してあげる事にした。


ミューはなんだかお菓子作りに悪戦苦闘してるみたい。


「イチゴちゃんは、魔法でササッと作れちゃうよね?」


「そーね。 なるべく自分でするようにしてるけど」


「便利なのに、どうして? MPの削減?」


MP(マジックポイント)なんて無いから、と笑いながら言った。


「そういえば、イチゴちゃんは魔法使う時、指で魔法かけるよね? それってかなり高度な技術だってお母さんが言ってたよ。 普通の魔法使いは、魔女の薬を作るか、魔力の強いステッキや杖を使わないと、魔法が使えないって」


「それは…」


そこまで言うと、続きを言う前に口を閉じてしまった。
トマトがひょこっとやってきて、鍋を覗く。



「チョコレート、こげてるけどいいのかい?」


「きゃー! 本当だっ」


「チョコレート、直火? それは焦げるわ」


私は、ミューの手伝いをする事にした。


内心、ホッとしてる。
さっきの話題をはぐらかす事が出来たから。


全てを知ってるトマトが、気をきかせてくれたんだ。


言葉には出来なかったけど、トマトにありがとう、と心の中でだけ言うと、トマトは悟ったように頷いた。