俺にはない、何通りもの未来の選択。
それがナカジにはあったはず。
『……………だからだよ』
ナカジが少し寂しそうな顔を見せた。いつも学校では自信に満ち溢れた顔をしていたのに……こんな表情も出来るんだ。
『僕は勉強なんて嫌いだった。ずっとずっとな。
もう疲れたんだよ、期待されるのは』
『……………ナカジ……』
まさかそんな事を思っていたなんて知らなかった。そんな様子を見ていたカシワギが俺の肩を叩く。
『まぁ、今日の用はこれだ。後でゆっくり話そうぜ。邪魔者がいない所でな』
ギロリとリーダーを睨んだ後、カシワギとナカジはその場から去って行った。
俺とリーダーは街を見て回るのは止めて、とりあえず四番街に戻る事にした。
『あのナカジマって奴と知り合いだったのか?』
『…………うん、同じクラスだった』
まだ動揺がとれない。
別に身近な人がこの世界に来たって不思議な事じゃない。でもまさかナカジに会うとは思わなかったから………。
『まぁ、誰でも見えない内側に悩みを抱えてるもんだからな。それを他人に言えたら、こんな場所には来ねーよ』
リーダーの言う通りだ。
辛い、苦しい、助けて。
それが言えなかったから俺達はここにいる。
でもなんで、
なんでカシワギの仲間なんかに……………。