『ここだよ』


シーンと静まり返った空間でMがやっと口を開いた


目の前には一枚の絵。

ここまで左右に絵画が飾ってあったのにこの絵だけは廊下の突き当たり、しかもど真ん中に飾られてあった。


…………なんて言うのかな。

例えて言うなら今までの絵は兵隊で、
この真ん中の絵がボスって感じ。

要するに他の絵画とは全然違う威圧的があった。


『………ってかこの絵どこかで……』


『気が付いたね。この絵は前に君に見せた絵だよ』


やっぱりそうだ。俺がMに初めて会った日に見せられた一枚の写真。

その写真に写っていた絵はまさに目の前にあるこの絵だった。


『この絵がなんなの?』


『ここが入り口だよ』


『…………は、い、入り口って』



『自由の国。
僕達の、僕達だけの夢の世界の入り口さ』


そう言われてもただの絵にしか見えないし、これが入り口だと言われても冗談にしか聞こえない。

でもMの目は冗談を言ってる目じゃなかった。



“行ってはいけない”


“この線を越えてはいけない”


俺の頭の片隅で誰かが言ってる気がした。


自由の国、夢の世界。

この時の俺は先の見えない未来ではなく、
息苦しいこの世界でもなく、

線の向こう側、


フリーチルドレンと言われるその世界の魅力に
心が支配されていた。