「じゃあ、一色君、行きましょうか」

「……」

 そして、俺に有無を言わせることなく、天羽さんは俺を連れて行くのだった。
 それくらい今の彼女には迫力があった。

【3】
 
 天羽さんに連れていかれたのは使われていない教室だった。
 使われていない机、椅子があちこちに乱雑に置かれている。
 ここは校舎の外れに位置する場所で、用事がないかぎりここに近づく人はいない。
 もっとも、こんな使われていない教室を使用するのは、文化祭とかで物が置けないときにしかなそうだが。
 つまりは、俺と天羽さんの二人きりの空間のできあがりだ。
 ごく一般な男子高校生なら「もしや告白では!?」と考え、ピンク色の妄想をして青春を謳歌するところだが、生憎俺はそこまで馬鹿じゃない。
 十中八九昨日の件で呼び出されたのだろうな。
 
 天羽さんに連れていかれてからしばらく沈黙が続く。