天羽さんの衝撃的現場を目撃した翌日。
 クラス内での天羽さんはいつも通り可愛いくて、お淑やかだ。
 やはり俺が昨日見たのは天羽さんではなく、別人だったのだろうか。
 いや、そうに違いない。
 俺はそう結論づけて平穏に日常を過ごす……はずだった。

【2】

 ことが起こったのは昼休みだった。
 いつも通り午前の授業をやり過ごし、いつも通り谷風と一緒に昼食をとりおえ、いつも通り教室でだべっていたときだった。

「一色(ひいろ)君」

 鈴の音のような綺麗な声が上から降り注いできた。
 思わず体がびくっとはねる。
 その声はクラス内でよく聞く声でもあった。
 普段なら話しかけられて嬉しさいっぱいだが、今日は全然嬉しくない。

 目の前にいる谷風は声の主のを見上げてアホ面をかましている。
 ひどい顔である。
 俺はその声の元を向く。