刹那、握っていた手ごしに姫がびくりと震えたのが分かった。
 自分が殺されるかもしれないことを実感したのかもしれない。

「待て。姫を殺す意味はないだろ」

「んー? 可笑しなことを言うね。まさか姫様を連れて行く気かい? そんなことはないよね? そんなことしたら僕らの機動力が落ちて、いずれは追いつかれるよ。そもそも、君が城から抜け出した時点で姫を殺しておけばよかったんだよ。姫様を連れてちんたらしてたら、下手したら追っ手に追いつかれてたよ」

「連れて行くとか、そんなじゃない。別に殺さなくてもいいじゃないか」

「確かに。でも、いずれは滅ぼす国の姫。今殺さなくても、いずれは殺す。なら、別に今でもいいじゃん。それとも、君は姫といたことで情でも移っちゃったのかい」

「……」

 俺は。
 僕は。