今にして思えば、 それは間違いだったんだと思う。
 彼女にとっても、俺にとっても。
 でも、僕は。
 それでも僕は。
 その手を掴まずにいられなかった。
 たとえ、あのときに戻れたとしても、僕は彼女の手を掴むだろう。
 断言してもいい。
 何度でも、何度やり直しても、彼女の手を掴むんだ。
 そして、僕は後悔する。
 何度でも、何度やり直しても。

 瞑っていた目を開ける。
 周りは囲まれていた。
 俺は彼女の首に剣をかけていた。
 なにも、変わってない。
 俺の罪は逃れられない。

「ロスト? 嘘、だよね」

 彼女が俺に顔を向けて声をかけた。
 あのときと同じ瞳をしている。
 不安げに揺れている。
 でも、あのときほどじゃない。
 多分、まだ俺を信じているだろう。
 いや、信じていたいの間違いかもしれない。