言葉を発するのもだるかった。
 でも、僕に残された時間は少なかった。
 多分、さっきの短刀には毒が塗られていたんだろう。
 暗殺者がよく使う手段だ。

「なに言っているのよ! ロストは私を護ってくれた!」

 姫の瞳が揺れる。
 涙を流しているのだろうか。
 雨で分からない。

「違、……う。僕、は。憎しみに、……負けて、悪魔に、……魂を渡したんだ……! 僕は、この国が、みんなが、姫が、好きだったのに……!」

 そう、僕は裏切ったんだ。
 この暖かい場所を。
 居心地の良い場所を。
 自らの手で壊してしまった。

「ロスト! 喋らないで! もう、いいから!」

「姫、……最期に手を握って」