そう言って奴は構えをとく。

 僕は油断なく、奴を見据える。
 こういう奴こそ、油断させて相手を殺すのが上手い。

「うん、やっぱり君は手強い。
……本当に追っ手が近づいて来たみたいだし、僕はお暇するよ。じゃあね、ロスト君。もう会うことはないと思うけど」

 奴はその言葉を残して去った。
 気配は感じない。
 本当に帰ったのだろう。

 漸くそう断言して、構えをとく。
 と、同時に地面に倒れ伏した。

「ロスト!」

 姫が叫ぶ。
 俺に駆け寄る。

「大丈夫よ、ロスト! 直ぐお医者様をよんで治療してもらうから!」

「姫、……すみません」