静かに教室に入る。
まだ気づいてない。

早く帰ろう。

教卓にノートを置いた。

『だれー??』


!?!?
驚いて振り向くと、さっきまで寝ていた男子生徒が起きている。
まだ、とても眠そうだが………

やっべえ…
起きちゃったよ………

『ごっごめん!起こして悪い!2組の藍塔だけど、亘に頼まれたから!ノート置いてこいって!!!』
慌てて、話した。

すると、
『ん~??ちょっと来て??』と眠そうな顔で俺を呼ぶ。


どうしよう。
怒らせたかな………


そっと目の前まで行くと、
彼はじっとこちらを見つめる。


めちゃ見られてる………
冷や汗でじんわりしてくると、

ハッと彼の目は、見開いた。
『柚季君だ!!!藍塔柚季だろぉ!?』

いきなり自分の名前を連呼され、頷くだけで必死になっていると、彼は笑顔になった。

『わぁ!君がモテモテな柚季君だねぇ~すごいなぁ~』とまじまじと見てくる。


モテモテ………??
まさか。

『ちょっと待てよ。俺モテてないし!』と否定した。

すると彼は、
『僕も最近夜行バスばっかの生活だから、よく分からないけど~、クラスの人言ってたよー?クールでかっこいいって!』と、目をこすりながら言った。


クールって。
かっこいいなんて無縁だ。


それより、柚季が気になったことがあった。

夜行バスばっかの生活??
家無いのか?

『なぁ!夜行バスばっかの生活って、お前家ないのか??』と、聞いてみた。

しばらく黙った後、彼は我に返り、
『あっ!いや………そんなことないよ!寝言だから!』と否定した。

なんだ。
びっくりした。

『僕の名前は、柳世零兎《ヤナセレイト》だよ。起こしてくれてありがとう!じゃぁね!柚季君!』
と、零兎は慌てて教室を出て行った。


なんだあいつ。
変わった奴。

ふと時計を見る。
あれから一時間経っていた。

そろそろ、カラオケに向かうか。


そっと3組の教室を出て、里居と加棚が待つカラオケに向かった。