ついにきた。
gaiAとダークネイルのライブの日。

土曜日ということもあり、気合いを入れて来た。
黒の服を着込み、髪型もセットしてきた。


gaiAもダークネイルも、零兎と雛多に出会う前より身近に感じる。

でも、逆に緊張感もある。

友達の大舞台なのだ。
楽しむのは、もちろんだが、応援するのだ。

今日のライブ。
いいものになりますように。


会場に着くと、もうすでにたくさんのファンがチケット頼んで片手に並んでいる。

俺もチケット………
そういえば…
チケット貰った午後。
零兎に『そのチケットスタッフさんに見せてね!』って言われたんだ。


そっとスタッフさんに近づき、
『あの…これ……』チケットを見せた。

スタッフは、チケットを確認し、
頷いた。

『関係者様ですね。このチケットは、裏口入場になりますので、こちらへ。』小声で言い、案内してくれた。


『どうぞ。』
スタッフに連れられ、裏口から会場に入った。

まだ誰もいない。
一番前を独占状態だ。

こんな近くで…見れるなんて。。


しばらくすると、一般のファンが入場してきた。

あっという間に、会場が人でいっぱいだ。

早く。見たい。
気分が盛り上がってきた。


そして、会場が暗くなる。
歓声があがる。


始まった。

まず登場したのは、ダークネイルだ。

続々とメンバーが登場する中、豹も出てきた。
ダークネイルらしく、真っ黒の服だ。

ステージの真ん中でみんなに歓声をあびているメンバー。
豹が俺に気づいたみたいだ。

ニコッと笑ってくれた。

ドキッとした。

友達の雛多とはいえ、今目の前にいるのは、ダークネイルの豹。
顔の整った美青年。
かっこいい。


ダークネイルのライブがスタートした。
豹は、ドラムだからステージの奥だが、最前列にいた俺には、余裕で見えた。

激しい曲ばかりで、たくさん暴れてきた。

ダークネイルの番が終わり、次に出てきたのは、gaiAだ。
ボーカルのレウは、最後に出てきた。

一番前の真ん中にいる俺は、目の前がレウ。
レウは、俺を指差した。
そして、一瞬ライトが消えた瞬間、ピースサインをしたのが見えた。

今日のレウの格好もかっこいい。
やっぱり、憧れだ。レウは。
いつものブレスもつけている。

声もやはり最前列で聞くと、鳥肌ものだ。音域の広い美声を披露している。

gaiAのライブが終わり、今日のライブが終わったかと思った。
その時。

レウがステージ袖から出てきた。


『今日は、楽しかった??盛り上がってくれた?』レウは、ファンに問いかける。
『楽しかった!!』と口々に言うファン。

すると。
『今日はさ。俺の後輩バンドもきてるんだ。まだ売り出し中だから、ぜひ聞いてあげてほしい!』とファンに話した。

『いいよぉー!』『だれなの??』と騒ぎ出すファン。

レウは、ニコッと笑い、
『バンド名は、【華凛水蝶】《カリンスイチョウ》と言って、4人バンドなんだ。今回ライブに出演したおれらgaiAとダークネイルと違って、和をテーマにしているんだ。まだライブ経験も浅いから見守ってあげてほしい。』と説明した。

華凛水蝶。
確かに聞いたことない。
まだ無名バンドなんだ。

『聴きたぁい!!』と盛り上がるファン。

『一緒に盛り上がってくれるか!華凛水蝶!!!お前らの力見せてやれ!』と言い放ち、ステージ袖に消えたレウ。

メロディーが流れ出した。
俺が聞いてる中では、明るい曲のようだ。

メンバーが登場してきた。
若い。そして、和をテーマにしてるため、和装をしている。
一際目立つ子がいる。

俺が好きなバンドのメンバーにはいない、女形のメンバーだ。

ピンクと赤の蝶の刺繍がされた和装だ。
女形なので、スカート丈になっている。

一人一人自己紹介をしていく。
どうやら、あの女形の子は、上手ギターの華璃【ハナリ】というらしい。
声もまるで女の子だし、見た目も可愛い。

まるで、加棚のような癒しがあるよう。


華凛水蝶のライブが始まった。
まだ経験が浅いのは、なんとなく分かった。でも、嫌いではない。
和のメロディーが耳に鮮明に入ってくる。
日頃聞くメロディーじゃないから、余計だろう。
レウの後輩バンドなんだ。
人気が出るといいな。


華凛水蝶のライブが終わり、すべてのライブが終わった。
ファンが次々と出て行く。

そうだ。レウと豹に顔出して来ようかな。

そう思った俺は、スタッフにチケットを見せ、関係者入口を入り、出演者の楽屋に来た。

まだ小さいバンド三組だ。
大部屋の楽屋のようだ。

よし。

ノックをした。
『はーい!』
レウの声だ。

『俺。柚季だけど。』


『おー!入れよ!』すぐさま返事が来た。

『失礼します。』とドアを開けた。