まるで、里居のように、授業が早く終わらないかと、せかせかしていたので、いつもよりちょっと時間が長く感じた。

よし。終わった。

『よっしゃぁー!カラオケ行こうぜいっ!!』里居が肩を組んできた。


『直接向かえば、時間早いから、今日たくさん歌えるねっ♪』加棚が嬉しそうに寄ってきた。


そういえば………
この二人に誘われて、一緒に行くのは、初めてだ。
いつも俺が避けてた。

いや。逃げていたのかもしれない。


『行こっか!』俺が廊下に出ると、まさか………

零兎と雛多だ。
互いに
『あ……』となった。



やっぱり…
そうだよな…
弱虫の俺なんかより………
守ってくれた雛多のが、よっぽど………

頼りになる友達だよな………

一呼吸して、目を逸らした。





そしてゆっくり目を閉じた。
俺は、零兎の友達ではないんだな。

加棚が丁度教室から出てきた。

加棚の腕を掴み、
『加棚!早く行ってたくさん歌わなきゃな!』と足早に歩き、零兎と雛多の横を通り過ぎた。

『あっ!待って!柚君っ!里居君まだだよぉ~!』
加棚が言っているのも耳に入らなかった。

『あ!?柚季ーっ!!置いてくなよぉー!!』
後ろから、里居が走ってきた。



零兎と雛多もこちらを見ていたが、見ないフリをした。

俺の友達は、里居と加棚だけだ。