バスの中はすいていて、私達の他には二、三人しか乗っていなかった。

 そのせいか、私も準斗も、一言も言葉を交わさずに、停留所まで乗っていた。

 私の心の中は、上手く言葉にできないけど、ぐちゃぐちゃした感じだった。

 準斗のことが好きだと気づき、嬉しくもあり、恥ずかしくもある感情。

 準斗の様子が、最近少しおかしいのではないかと、心配する感情。

 その二つが重なって、嬉しいような悲しいような、変な感情が、私の心の中にはあった。


 やがてバスは停留所に止まり、私達は待ち合わせをした公園まで一緒に歩いた。

 公園についても何も会話はせず、

「じゃあ、気をつけて帰ってね。今日は楽しかった、ありがとう」

 準斗はそれだけ言うと、そそくさと逃げるように家の方向へと走っていってしまった。

 私はその背中に、「バイバイ」としか返すことができない。

 せっかく好きだって気づいたのに……。

 バスの中の空気に圧倒されたのか、準斗の元気がなかったように見えた。

 仕方なく私は、一人で家へと帰ることにする。

 この気持ち……気づいたはいいけど、これからどうしよう。

 お母さんには多分言わないだろうし、相談できる友達もいない。

 準斗にもちゃんと言いたいけれど、そんなこと私にはできない。

 いつかは言わなくちゃって、思うんだけどね……。

 でも……きっと私のことだから、言えずに終わっちゃう気がする。

 友達のままで、終わっちゃう気がする。

 そんなのは嫌に決まってるけど、私は意気地なしだから。

 それより……これからどうしよう。

 これからも準斗とは一緒に下校したり、時には遊んだりすると思うけど……。

 変に意識しちゃいそうで、不安だった。

 それに、友達としてじゃなく、一人の男として好きになった準斗と一緒にいるなんて……。

 嬉しい反面、恥ずかしくって緊張しちゃいそうだ。

 私……どうすればいいんだろう。

 もやもやとした気持ちを抱えながら、私は家に続く道を歩いていたのだった。