その日は特に何もない一日だった。

 帰りのHRが終わると、私はそそくさと一人で外に出た。

 私には、一緒に帰れるような友達がいない。それ以前に、友達が少なかった。

 私の積極的ではない態度が悪いのだろうが、いつも一緒にいてくれるような友人を作るのが難しかったのだ。

 少し前までは、そんな自分が嫌で、何となく学校も憂鬱だった。

 しかし、今では違う。

 途中からだが、私と並んで道を歩いてくれる人ができたからだ。

「あっ、いたいた」

 彼の姿を見つけた私は、電柱の陰に向かって大きく手を振る。

「おーい、準斗くーん!」

「あっ、穂乃果」

 彼も私に気づいたようで、手を振り返してくれた。

 彼は、不知火準斗(しらぬいじゅんと)くん。私と並んで歩いてくれる、ゆういつの男の子だ。

 準斗くんは中学校には行っておらず、家で下の子達の面倒を見ているらしい。

 詳しいことは話してくれなかったのだが、もしかすると家計が大変で、学校に行くお金もないのかもしれない。

 そんなこともあり、準斗くんにも仲の良い友達はいないそうだ。

「今日は早かったね」

「うん、急いで出てきたからね」

 私がそう言うと、準斗くんは「ふぅん……」と呟いてから、

「それって、僕に会いたくて、ってこと?」

 意地悪そうに笑みを浮かべながら、私を見つめた。

「ふ、ふえっ……!?」

 いきなりの質問に、私は動揺してしまう。
 しかし、すぐに落ち着きを取り戻すと、

「そ、そうだね……。準斗くんに、会いたかったから……かな……?」

 途切れ途切れにだが、何とかそう言い切った。

 顔が熱いのが分かるから、きっと私の顔は真っ赤なのだろう。