取ったはず……なのだが。

　なぜか私の手は、準斗くんの手を掴むことはできなかった。

　狙いがずれたかのように、手のひらは空をきる。

　あれ……？　私って、こんなに感覚オンチだったっけ？
　すぐ目の前にある手すらも、掴もうとしてからぶるなんて……。

　視線を準斗くんに向けると、

「…………………」

　準斗くんは、なぜか悲しそうな表情を浮かべていた。

　しかし、私が自分のことを見ていることに気づくと、

「ちょっと穂乃果、何やってんの。そんなことでからぶるなんて、穂乃果は鈍いなぁ」

　やや苦笑に近い笑みを浮かべながら、自分から私の手を掴んだ。

　今度はちゃんと、準斗くんの手の感覚が、私の手へと伝わってくる。

　やっぱり、私が鈍かっただけみたいだ。何やってんだろう、私。

「ご、ごめんね」

　自分の鈍さが恥ずかしくなり、私は顔を伏せながら、呟くように謝った。

　しかし準斗くんは全く怒ったり、私をバカにしたりせずに、

「ううん、気にしてないよ」

　微笑みながらそう言って、私の手を引きながら、歩道へと歩いて行った。