そう言った瞬間、今までの穏やかな空気が変わった。
普段の優しい藤川さんの目つきが鋭くなる。
「だからって、わざわざ彼女を危険な目に遭わせるのはやめてくれないか?」
「犯人を捕まえるには、多少のリスクは仕方がないでしょう?」
とことんあいつに甘い藤川さんに、思わず呆れて笑ってしまう。
「君が今までどんなとこで働いてきたのか知らないけどさ、命が助かれば別にいいって訳じゃないんだ」
「じゃ俺なんて雇わないでくださいよ。こっちもいい迷惑です」
「ふざけるなっ。この前だって一歩間違えれば、あの子は一生消えない傷を背負ったかもしれないんだぞ!あの子は、まだ17才の普通の女の子なんだから……!」
声を荒げた藤川さんだったが、千遥が戻ってきたことに気付いて慌てて口を噤んだ。
「ど、どうしたの……?喧嘩?」
内容は聞かれていないようだ。恐る恐る聞く千遥に藤川さんは、なんでもない猫の話でちょっと口論になっただけだよ、とにっこり返した。
藤川さんはこいつが大事なんだろう、こいつが来た途端目がさっきとはまるで違う。
だけど、
「藤川さん、俺はやり方変えるつもりないですから」
たとえ、あんたの大事な千遥が傷つこうとも……
そう言って部屋を後にした。