私はいつも知らずにこうして空を仰いでいた。

 誰かに助けて欲しいとき、答えの分からない疑問に困ったとき。

 昼間見る空に星はない。けれど、見えないだけで、私が見上げた空にたまたま、星が流れていたら。

 ホシテントウの飛行はまるで、地上に落ちた流れ星が、願いをかなえて、また空に帰っていくようだった。



 しばらくしてホシテントウは、再び舞い降り、迷っているように近くの宙を飛んでいた。

 私が手を差し出すと、カシャっと手の中に落ちてきた。

 その瞬間、わずかにあった黄金の夕陽が山の稜線から消える。

 最後の光で私はホシテントウの背中の模様を見た。

 星型が三つしかないように見えた。

 夜になった。

 ゆっくり深呼吸して夜空を見上げる。

 小さなホシテントウの星が一つ、この晴れた夜空の降るような星屑の中に帰っても、空の見た目は何も変わらない。

 ずっと昔からこうしてあったかのように、地球を包み込んでいる。

 中天を見やれば、天馬星座の胴体の正方形を構成する四つの星が遠くで瞬いていた。

 意思を持った者を助けた天馬がいたのは神話の時代で、その天馬もいまや星座となって、秋の星座に混ざり私たちの外側を、まわっているだけ…



 ……本当にそうだろうか。


 私は手の中の三つの星をしばらく見つめた後、草むらに戻す。

 小さなホシテントウは一瞬で夜にまぎれた。


 私は、ススキの合間をそっと歩いて、わき道に出る。

 さようなら、ホシテントウ。
 
 その小さい体が流れ星や、ましてや天馬だった時があったなんて、けっして信じられはしないけど―――

 背中の星が消える前に。

 また誰かが願ってくれるといいね。