籠を上下なぞるように見回すが、黒い粒はどこにもない。

 蓋は開いてないし、網の部分の穴は天道虫が通れる大きさではないし。

 なんで。

 籠を置いた草むらに顔を近づけて、動くものはないか息を殺して目だけで捜した。

 いない。

 草を軽くなでるように払いながら捜し続けた。

 それでもいない。

 どんどん暗くなってきて、ますます見つけづらくなって、もう泣きそうになる。

 そのとき、またあの音がした。


 カシャ


 近くにいる。


 カシャカシャ


 四つんばいになった私の頭のほうから聞こえる。

 わたしはゆっくりと空気さえも動かさないように、顔をあげた。