夕方になってバイトを終えるとすぐに籠を持って家に帰った。

 籠はふたの部分だけが網のようになっていて、器のほうはプラスチックだったから中にいる天道虫は、足が滑るらしく底に体をぶつけてばかりいた。

 草も一緒に入れてあげよう。

 朝見たときは夏の暑さでぐったりしていた草むらも、暮れていく空を見上げ、秋の風に身をゆだねている。

 目の前の畑には、箱型の発泡スチロールに入った玉ねぎの苗が『ご自由にお持ちください』の紙と一緒においてあった。

 私は、ちょうど天道虫を取った場所で草をむしり始めた。

 もう肥料のにおいはしなかった。

 綺麗そうな枯れ草を集めて、虫かごの蓋をゆっくりと開ける―――と、開ける前にちらりと見た籠の中に、天道虫がいない。

 な、なぜ。