『もしもし…』
「あ、もしもし?さえちゃん?」
相手はケンだった。
ケンはすごく機嫌がいい様子で
アタシの源氏名を
スムーズに言葉にしてた。
『そうだけど、どうしたの?何かあった?』
「あ、いや今日は仕事がいつもより早く終わってさ☆気分がいいんだ!!』
ケンは本当に無邪気に喜んでる様子だった。
『いつも終わるの遅いんだ?』
「うん。だから久々にテンション上がるよ☆あ、用事ってかアドレス聞いてなかったと思って!!」
社交辞令じゃなかったんだ。
そんな風にあの時思ったのを覚えてる。
でも本当に
アタシ達は出会うべくして出会ったんだろうね。
普段番号を教えないアタシが
あの日は何の抵抗もなく教えた事。
気が向かなきゃ出ない電話を
何の迷いもなく出た事。
全てがきっと
決まっていたんだね。