「例の騒ぎは、本当にお騒がせしました」




静かになった会場に、彼の声が響く。




「たくさん心配をかけて、たくさん人を傷つけたと思っています」




碧らしくない、その言葉。

きっと、蒼は真摯にファンと向き合いたかったのだろう。

心から謝りたかったのだろう。





「もう!何言ってるんですか!!」




近くで中山さんの叫び声が聞こえる。

そして、




「碧ー!」



「そんなことないよー!!」




なんて叫ぶ声も会場から上がる。





「でも……」




そう言って彼は再びアリーナを見た。




「不倫なんてしない。

キャラに合わないかもしれないけど、人を傷つけることは嫌いです」




ズキンと胸が痛む。




ねぇ、もうやめて。

これ以上言わないで。

今は蒼じゃなくていい。

だって……

これ以上やったら、碧じゃなくて蒼のファンが増えてしまうよ?