タクシーを降り、通用口で通行証を見せる紅さん。
「お待ちしていました」
スタッフはあたしたちを関係者席に案内する。
蒼はもう、最前列を用意してくれない。
その代わりに関係者席を用意してくれる。
ステージの目の前ではないが、ステージを近くで一望出来るかなりの良席。
ぐるっと辺りを見回すと、すでにアリーナは多くの人で埋まっていて。
遠くの人は、米粒のように小さかった。
すごいね、蒼。
Fって、こんな大きなアリーナをいっぱいに出来るんだよ。
みんなはね、Fの音楽を聴きたくて仕方がない。
蒼に会って握手して、サインしてほしいんだよ。
そんなすごい人なのに……
あたしを選んでくれて、ありがとう。
あたしを大切にしてくれて、ありがとう。