どうしてあたしに触れてくれないの。
なんでいつもみたいに、あたしの手を取って引っ張ってくれないの。
ムシャクシャして、大きなガラスでも割りたい気分だ。
付き合ってから今まで、ずっと高崎はあたしを大事にしてくれた。
裕也なんかより何百倍も。
いつも隣にいてくれるし、面白くないあたしの話だって真面目に聞いてくれるし、
いつもいつもあたしの横で笑ってくれていた。
そう、わかっていても
あたしの気持ちはおさまらない。
こんなの初めてでどうすればいいかもわからない。
ため息を着いたあたしは、やっと小走りをやめてゆっくり歩いた。
家につくまで、まだまだ道は長い。
高崎と一緒に帰るときは、一瞬で終わってしまうのに。
不思議……
小夏が言ってたこと、ちょっとわかるかもしれない…
長い長い道を、あたしはずっとひとりでその答えを探しながら帰った。
***
次の日。
むすっとした顔で起きたあたしは、ベットの近くにあった時計を横目で見る。
長い針と短い針がさすのは
5時46分。
まただ…………
もしかしたらお婆ちゃんにでもなってしまったのかもしれない。
年寄りは早起きするって聞いたことがあるし……
眠い目を擦りながら、あたしは昨日と同じくゆっくりと支度をした。
高崎とは昨日からひとつも連絡を取っていなくて、
自分でもどうしたらいいのかわからない。
話す言葉もないし、
それに、高崎を頭に浮かべると
あの光景しかでてこなくて、
それが嫌で、なるべく考えないようにしてた。
「はぁ……やだな、こんなの」
ポツリと呟いたあたしは、ローファーを履き、昨日よりもまた少し早く家を出た。
「あ、出てきた」
心臓が止まるかと思った。
アリエナイ。
こんなこと、予想もしてなかった。
玄関前には、昨日と同じように高崎が立っている。
あたしを見てにこりと笑うと、手に持っていたケータイをポケットにしまった。
「今電話しようとしてたんだ、ごめんな朝早くから」
「な、……いや……、うん。大丈夫」
高崎の顔をまともに見れない。
「昨日一緒に帰れなかったから」
彼は微笑んで、また私を促した。
気付いてないのかな……?
昨日のあたし、ものすごくあからさまだったけど…
隣で楽しそうに話す彼に、あたしは戸惑うばかり。
学校に着くまで、それはずっと変わらなかった。