それに加えて、意地悪なのも。




さっきみたいに、冗談をいって
すぐ私を困らせてくる。



「日向くんの意地悪、それわざとでしょ」



「何が?」




とぼけた顔をされて、更に恥ずかしくなった。




「そうやって、いつも私の事いじめるじゃん」




「例えば?」




う……、



いつもいつも、
日向くんのペースに巻き込まれる。




「よく変な嘘つくし、…すぐ恥ずかしいコトいってくる…」



日向くんからの、全くブレない視線に堪えきれなくなった私は、自分の膝に視線を落とす。




「それは俺だけが悪くねぇよ」



「!…わ、わたし何もしてないよ!?」




冷静に言い訳をされて、私は反射的に顔を上げた。




上を向いた私の視界には、日向くんの長い睫毛と、綺麗な黒い瞳。



私の呼吸が止まる。



秋風で冷えた私の唇に、日向くんの口が重なった。



日向くんが私に触れていたのは一瞬で、私が目を閉じた頃にはすぐに離れてしまった。



「してる。 こうやってすぐ赤くなる」




鼻先が触れそうなほどの至近距離で、彼は私にそう言った。


私は恥ずかしくて、思うように視線を動かせない。



日向くんの顔を見なくても、
きっといつもと変わらない済ました顔をして言っているのが分かる。



いつだって、私ばかりがはしゃいでいるから。




“今日の帰り道、小夏から甘えてみるとか”




不意に私の頭の中をよぎったのは、お昼休み華が言っていた言葉。




「(日向くんだって、ちょっとくらい恥ずかしがったって良いのに…)」




そんな私の願いが、いつもは緊張で固まって動かないこの身体を動かした。




「日向くんのせいじゃん…」