「は、早くしないとお昼終わっちゃうよ」



いつまでたってもお昼を食べ始めない男子二人に、私はそう言うと
時計をチラリと見た。



「…はぁ、。…葵生、行くぞ」



渋々諦めた高崎くんは、項垂れて私の席から離れていった。



数十秒後に、くるりとこちらを振り向く。



「華ちゃん、俺 放課後委員会だけど直ぐ終わるし、待ってて」



大きな声でそう言うと、日向くんの肩を無理矢理組んで、教室を出ていった。





「はーい」




そっけない返事を返した華だけど、



…私は知っている。




高崎くんが居なくなったあと、華は、嬉しそうに微笑む事を。




それをみているだけで、こっちがにやにやしてしまいそうになる。




可愛いなぁって、私も一緒に笑えば
華に「何笑ってんの?」と、頬を摘ままれる。



顔が少し赤い華を見て、痛い痛いと言いながら、笑い合うのが
凄く幸せな時間だ。




「あたしのことはいいから。…小夏はどうなの?今日も日向と帰るんでしょ?」




華からのカウンターを受けた私は、何も言わずにお弁当のおかずを口に入れた。




…もちろん、今日もいつものように一緒に帰るけど…



「うん。…帰るよ」



「何、その顔」



「・・・・」




…私には最近、悩みがある。



ちょっとしたことなんだろうけど、やっぱり何度考えてもモヤモヤしてしまうの。



その悩みっていうのが…__




「日向く〜〜んっ」




教室に戻ってきた日向と高崎くんに近づく、沢山の女子たち。




「お昼まだなの?一緒に食べよ〜」


自分の彼氏が目の前でベタベタ触れられているこの光景に、私の頭の中はいつも悩まされているのだ。




日向くんが、前よりモテモテになっている…。



もともとあんな感じだったのかもしれないけど、何かが違う。


私と付き合ってから、さらに女子たちが集まるようになった、と思う…




「あーー…アレか」



華は私の視線に気づいて、察したように声を出した。




「日向、小夏と付き合ってから雰囲気変わったし、女子も近づきやすくなったんだよ」




そう、華の言う通り。



日向くんが、前より少し優しくなっている。



それは嬉しいことなんだけど…