緊張を隠しきれず震え手で、指定された教室の扉に手をかけた。

室内からざわついた声がもれていた。

ゆっくりと扉を開けを開けると、席に座っている人たちが教室を埋めつくしていた。


……知らない人ばかりだ。


心細い気持ちで室内を見渡し、空いている席を見つけ、そこに座る。

机に置いてあったホッチキスでとめてあるプリントをほおづえをつきながらぱらぱらとめくる。

それはただ手持ち無沙汰でめくっているだけで、内容なんて頭にははいらなかった。


前列に座っていた一人の男子が立ち上がり、壇上に立った。


「一人転校していったので、代わりに選出された人に自己紹介をしてもらう。
く、くるみざわさんで良かったかな！？」


壇上の男子から、突然私の名前を呼んだので驚く。」


「えっと、……胡桃沢　亜梨朱です。
よろしくお願いします。」


簡単に自己紹介を済ませ、軽く会釈をした。


「胡桃沢亜梨朱っていうんだ。」

隣の男子が、声をかけてきた。


「僕は田中　海(たなか　かい)よろしくね。」

目尻をさげながらニコニコしていた。

タレ目の人懐っこい雰囲気をもった男の子だった。



「こちらこそ、よろしくお願いします。
途中からだから全然分からなくて……教えてね。」


壇上の男子が、今後の仕事内容についての説明を始めたので、田中君に小声で答えた。

田中君のおかげで、なんとかやっていけそうかなと安心した。